西暦100年 クラウディオス・プトレマイオス

西暦100年頃「ギリシャ・ローマの学者」
クラウディオス・プトレマイオス(Claudius Ptolemæus)
紀元100年頃ギリシャ・ローマで生まれた
160年代/​​170年代頃アレクサンドリア、エジプト、ローマ帝国で歿
古代ローマの学者。エジプトのアレクサンドリアで活躍した数学・天文学・音楽学・光学・地図製作など広い分野にわたり業績を残した。プトレマイオスは、天動説に基づく、円運動の組み合わせで天体の運動を説明する理論を作りあげ、古代ギリシアの天文学を集大成した。天文学主要な著作は、『アルマゲスト』、『簡便表』(Πρόχειροι κανόνες)、『惑星仮説』(Ὑποθέσεις τῶν πλανωμένων)である。著書『テトラビブロス』(Tetrabiblos、四つの書)は、占星術の古典として知られている。著作『ゲオグラフィア』(Geographia、地理学)は、地球球体説に基づいた最古の体系的な数理地理学書で、古代の人々の地理に関する知識を集成した。音楽については、音程を二つの音の数比で表すピュタゴラス派の方法論を批判的に継承した。定性的な方法を示した古典期のアリストクセノスの『ハルモニア原論』を新ピュタゴラス派(ピュタゴラス派の伝統は紀元前4世紀の末に一度途切れている)の立場から痛烈に批判し、独自の見解を提起したハルモニア論(全三巻)を著した。
◇◇◇
紀元146~147年頃、プトレマイオスはカノープスの神殿に碑文を建立した。これはカノープス碑文 として知られている。碑文自体は現存していないが、6世紀に誰かがそれを書き写し、写本によって中世を通じて保存された。碑文は「救世主の神に、クラウディオス・プトレマイオスは天文学の第一原理とモデルを捧げる」で始まり、太陽、月、惑星、恒星の運動を支配する天体力学の体系を定義する数値のカタログが続く。
「ハルモニア論概要論文」を書いた
本作は全3巻から構成されている。第2巻は第1巻の内容を継承していないように見受けられ、第1巻は第2巻・第3巻とは別個の作品であるとする見解が広く支持されている(ただし、全員の合意が得られているわけではない)。
倍音の構成要素:
(1) (The Genera)– クラウディオス・プトレマイオスの『音楽論(ハルモニカ)』において用いられている「The Genera(ジェネラ、単数形は Genus ジェヌス)」は、日本語では「属(ぞく)」と訳され、古代ギリシャ音楽における「テトラコルド(4音音階)の内部の音程の割り振りパターン(音組織の分類)」を意味する。古代ギリシャ音楽では、最高音と最低音が「完全四度(4:3の比率)」に固定された4つの音の並び(テトラコルド)を音楽の最小単位としていた。この固定された外枠の中で、「間の2つの音をどうチューニングするか」というバリエーションの数々を「Genera(属)」と呼ぶ。
プトレマイオスはこの「属」を整理・再定義し、主に以下の3つの主要な属に分類すると…
➊. Diatonic Genus(全音階属)
現代のドレミの音階に最も近い、全音(広い間隔)と半音(狭い間隔)を組み合わせたもっとも自然な音配分です。プトレマイオスはこのディアトニック属をさらに細分化し、いくつかのバリエーション(緊張ディアトニック、柔軟ディアトニックなど)を提唱しました。特に彼が定義した「緊張ディアトニック」の比率は、後の西洋音楽における「純正律」の基礎となる重要な計算であった。
➋. Chromatic Genus(半音階属)半音づつの狭い音程を連続させ、残りのスペースを広い音程(短三度など)で埋める、少し妖艶で哀愁を帯びた響きを持つ音配分である。
➌. Enharmonic Genus(エンハーモニック属)半音のさらに半分である「四分音(微小音程)」という非常に狭い間隔を用いた、極めて繊細な音配分である。
プトレマイオスの時代にはすでに廃れつつありましたが、彼は理論的な調和の体系としてこれも数学的に正しく位置づけた。
プトレマイオス以前の理論家(アリストクセノスなど)もこの3つの属を使っていたが、プトレマイオスはそれを「正確な数学的比率(分数)」によって厳密に定義し直した。彼にとって「Genera」とは、単なる音楽のスタイルの違いではなく、「人間が耳で聴いて美しいと感じる調和(感覚)」と「数学的に正しい比率(理性)」が、どのように美しく一致するかを証明するための具体的なチューニングパターンだったのである。
(2) Distantia(Intervals) – ギリシャ語のdiastēmaは、現代の音楽用語でいう「音程(2つの音の高さの隔たり)」を意味する。しかし、プトレマイオスをはじめとする古代ギリシャの数理音楽学において、この「音程(Distantia)」という言葉には、現代の私たちが考える「音の距離」よりもはるかに厳密で数学的な意味が含まれていた。
プトレマイオスの音楽論における「Distantia」の重要なポイントは以下の3点である。
➊. 音程とは「空間的な距離」ではなく「数学的な比率」当時、音楽家の中には「音程とは、定規で長さを測るように足したり引いたりできる空間的な距離である」と考える人々(アリストクセノス派などの感覚派)もいた。しかし、プトレマイオスはこれを否定し、音程(Distantia)の本質は「2つの音の物理的な関係(弦の長さや振動数の『比率』)」であると定義した。例えば、1オクターブという音程(Distantia)は、単に「高い音と低い音の距離」ではなく、弦の長さの比率が 2:1である状態そのものを指します。完全五度は3:2、完全四度は4:3というように、すべての音程は固有の数学的数値(分数比)として表された。
➋. 音程の計算は「足し算」ではなく「掛け算」音程を「比率」として捉えるため、プトレマイオスの理論では音程同士を組み合わせる際、現代のような足し算は行わない。例: 完全四度(4:3)の音程と、完全五度(3:2)の音程を「足す」と、1オクターブ(2:1)になります。これをプトレマイオスたちの数理天文学の視点で見ると、比率の掛け算になります。4分の3×2分の3=6分の12=1分の2、このように、彼にとってDistantia(音程)を扱うことは、宇宙の調和(ハルモニア)を構成する数式を解くことと同じであった。
➌. 協和音程(美しい響き)の条件プトレマイオスは、数あるDistantia(音程)の中でも、特に耳に心地よく、かつ数学的に美しい比率を持つものを「協和音程(Symphōnoi Distantiæ)」として重視しました。彼が認めた美しい音程の条件は、比率が「n:1(倍比)」か「(n+1) : n(上三分比、分子が分母より1だけ大きい比)」になるものであった。このルールに当てはまる音程こそが、宇宙の秩序を反映した正しい音程であるとされています。まとめプトレマイオスの音楽論における「Distantia(Intervals)」とは、単に耳で聴く音と音の幅のことではなく、「宇宙の調和(ハルモニア)を証明するための、2音間の厳密な『数学的比率』」を意味している。
(3) Notes– ラテン語のNotaeは古代ギリシャの数理音楽学における「Note(フトンゴス-元の古代ギリシャ語は「Phthongos)」は、現代私たちが考える「音符」や「単なる音」よりも、さらに厳格な定義を持っている。その意味は以下の通りである。
➊. 「一定の高さ(ピッチ)を保つ音」。プトレマイオスをはじめとする古代の音楽理論家は、人間の耳に入る音を大きく2つに分類した。
・音の高さが滑らかに上がり下がりし、特定のピッチに留まらない音。(ひとつの安定した絶対的な高さを持つ音)
・一つの高さ(ピッチ)にピタッと静止し、揺れ動かない音。
プトレマイオスにとっての「Note」とは、「特定のピッチで安定して発音され、聴覚によってその高さが正確に識別できる音」のみを指す。
➋. 音楽理論における「最小単位(点)」
幾何学において「点」が集まって「線」になるように、プトレマイオスの音楽論において「Note」は音楽を構成するこれ以上分割できない最小単位(原子)として定義されます。Note単体ではただの「点」であり、それだけではまだ音楽的な調和を生み出しません。
➌. 「Notes」とは、Distantia(音程)という数学的関係を作り出すための「両端の境界線(スタート地点とゴール地点)」としての役割を果たします。2つの「Notes」が存在して初めて、その間に「Distantia」が生まれるのである。
(4) Systēmata(音組織や音階体系) ― 古代ギリシャの音楽理論において、この言葉は単に「ルール」という意味ではなく、「複数の要素が結びついてできた、一つの完成された音のグループ(体系)」という非常に具体的な意味を持っていた。
➊. 「Systēma」とは、2つ以上の音程が組み合わさってできた音の並び(スケール)のことである。単一の音程(例えば完全四度だけ)は「Distantia」であるが、それが複数集まって「ド・レ・ミ・ファ」のような連続した音のグループになると「Systēma」と呼ばれる。
➋. 古代ギリシャ音楽の最小の音組織(Systēma)は、4つの音からなる「テトラコルド」であった。プトレマイオスたちの音楽論では、このテトラコルドをパズルのようにいくつも連結させて、2オクターブに及ぶ巨大な音のネットワークを作った。これを「大完全体系(Greater Perfect System)」と呼び、これも代表的な「Systēma」の一つです。現代でいう「ピアノの全鍵盤のルール」のようなものである。
➌. プトレマイオスにとって、個々の音や音程がバラバラに存在している状態は未完成であった。それらが数学的に正しい比率で美しく配置され、一つのカチッとした「体系(Systēma)」にまとまることで初めて、宇宙の調和(ハルモニア)が目に見える(耳に聞こえる)形になると考えたのである。
(5) Tonoi (Modes)(旋法)― 「Tonoi」は元々「弦の張り(テンション)」などを意味するギリシャ語から派生した言葉で、音楽においては「音階(スケール)」や、その音階が置かれる「基準となる音の高さ(ピッチレベル)」を指す。プトレマイオス以前(アリストクセノスなどの理論家)の音楽論では、13〜15個の「トノイ」が存在するとされていました。当時のトノイは、現代でいうカラオケのキー変更のように「同じメロディの構造を変えずに、そのまま高い音域や低い音域にズラす(=単なる移調)」ための基準としての意味合いが強いものであった。しかし、プトレマイオスはこのシステムを数学的・理論的に整理し、独自の解釈を与えまた。彼は不要なトノイを削り、宇宙の調和や数学的秩序に基づき「7つ」に絞り込ん(ドリア、フリギア、リディアなど)。プトレマイオスにとってのトノイは、単に曲全体の音を上げ下げするだけのものではなかった。彼はトノイを「オクターヴ内における、特定の全音と半音の並び方(オクターヴ種)」と固く結びつけた。現代の音楽感覚に当てはめると、プトレマイオスの「Tonoi」は次のような働きを持っている。ただ音を高くするだけでなく、「全音・全音・半音…」といった音程の並び方そのものが変化します。例えば「ハ長調」を「ハ短調」に変えると曲の雰囲気がガラッと変わるように、トノイを切り替えることは音楽の性格(感情的効果)を変えることを意味した。一定の声域の中での音階の再構築: 彼は、人間の声が出しやすい一定の音域(中央のオクターヴ)の中で、構成音をどう入れ替えるかによって各トノイを定義した。プトレマイオスの音楽論における「Tonoi (Modes)」とは、単なる音の高低を示す記号ではなく、「全音と半音の独自の並び方によって、音楽の性格や調和を決定づける7つの基本的な音階構造」を意味している。
英語の文献や翻訳で「Tonoi」に「Modes(旋法:教会旋法などのモード)」という訳語が当てられるのは、それが単なるピッチ(Key)ではなく、音の並びのルール(Mode)を明確に規定しているからである。
(6) Modulation– 主に「ハルモニア(旋法)」やテトラコルド構成を変えることで音階体系を移行させることが、変調に相当する概念で、テトラコルドは完全4度の音の間に2音を入れた4つの音から作られ、1番高い音と1番低い音は高さが固定されており、中に入れられた2音の音程の構成から、全音類(ディアトノン)、半音類(クローマティコン)、四分音類(エンハルモニオン)の3つの種類があった。
(7) Construction / Composition– プトレマイオスは、「音楽の美しさは数学的な比率に基づいている」と考えた。Constructionは、弦の長さをどのような比率(例えば4:3や5:4など)で分割すれば調和のとれた「テトラコルド(4音音階)」が作れるのかを、数学的に割り出すプロセスを指す。
現代の言葉で言えば「楽器の正しいチューニングシステムや音階のルールを、理屈で設定すること」であり、音楽の基礎となる骨組みを作る作業である。
Composition/(Compositio:作曲・旋律法・合成。これは、「構築された音階を使って、実際の音楽(メロディ)を形作ること」、または「複数の音程を組み合わせること」を意味する。古代ギリシャ語の Melopoiïa(メロポイア/旋律法)や Synthesis(合成)に該当する。Constructionによって定義された音階のルールに従い、それらの音をどのように並べ、連続させて美しい旋律を生み出すかという「実践的・芸術的なプロセス」である。
また、理論的な文脈では、2つの音程を組み合わせてより大きな音程を作る「音程の合成」(例えば、完全四度と完全五度を組み合わせて1オクターブを構成する計算)という意味でも用いられる。

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